船の船首と船尾のちょうど中間地点の水面付近に丸に横線を引いた印を見られたことありませんか ?? この串団子のような印は何のためのものでしょう ??
船に荷物を積んでいくと、船はだんだん沈んでいきます。 積み続けると最後は沈没してしまいます。 それではいけないので、「船体のこの線まで水面がくるまで荷物を積んでいいですよ」 逆の言い方をすると、「この線が水面下に隠れてしまうまで荷物を積んではいけません」 という標(しるし)、「乾舷標」(Freeboard Mark 又は Plimsoll Mark) です。
通常は1隻の船に1つですが、各地の港や岸壁の入港船舶の載貨重量トンの制限の関係で、 船籍国の了解の下、船級協会などがオリジナルの載貨重量トンより小さい(軽い)、複数の 乾舷(フリーボード)を計算、指定する場合があります。 「マルチプル フリーボード」 と呼んでいます。
タンカーなどは写真のように 7 個 も付けている場合もあります。 乾舷標が 7 個 付いているということは、満載喫水線条約証書も 7 種類 持っています。
しかし、船の運航中は使用する乾舷標は1つのみ表示、あとの乾舷標はペンキで塗りつぶして おかねばなりません。 満載喫水線条約証書も使用中の乾舷のもの1種類のみ使用し、あとは封筒に封印 (通常、船級協会の Surveyor が封印)しておかねばなりません。
先日クルージングの際、東播磨港でやけに賑やかな「乾舷標」を付けた船を発見。 見ると 3 個 のマーク全てにペンキを塗って表示、おまけに一番上の部分は黒色で塗りつぶしたまま。
(写真右側の船) これではいけません。
幸い、土曜日で PSC (ポート ステート コントロール) もお休みでしたが、PSC に発見されると直ぐに塗りなおしを
要求されます。 しかし、ここの私設岸壁では安全規則でペンキ塗りはさせてもらえません。
結局、再度錨地を手配、沖で船を止めて作業ということになってしまいます。 ちょっとした乗組員さんの不注意・無理解が高い出費になることがよくあります。
通常、乾舷標を別のものに変えたり、オリジナルに戻す際は船級協会の臨時検査を受けて確認を受けます。
いくつかの船籍国の場合、この変更が急に決まったり(大抵は傭船者から船主へのリクエスト)、場所が僻地で
船級協会のSurveyor が行けない時は船長が代わってその書き換え、証書の差し替えを行ってよいとなって
います。 でも、前述のような全ての「乾舷標」にペンキを塗ってはいけません。
愛する女性が3人いても、3人が同時に顔を合わすと大変なことになるのと同じです。